どんなバラ?
7㎝から9㎝径、シングル・平咲きとなる花形。
花色はホワイト。結実はオレンジ・レッド、小さなトゲに覆われたとがり気味のミニ・トマトのような形をしています。春の開花後、冬季までちらほらと返り咲きする性質があることで知られています。
強い香り。ベイモミに似た香りだという解説もありますが、はたしてどうでしょうか。
縁にノコ目が強く出る、7から9葉の小葉。グレーがかった明るい色調のつや消し葉は多くの原種のなかでも非常に特異なものです。小さなトゲが密生する、太く固めの枝ぶり、180cmから250cm高さの立ち性のシュラブとなります。
発見の経緯と命名の由来
1871年頃、ロシアのプラント・ハンターであったフェデツチェンコ夫妻/Fedtschenko, Alexei & Olgaによって発見され夫人のオルガ/Olgaちなんで命名されました。( Roger Phillips & Martyn Rix, “The Ultimate Guide To Roses”)
新品種としての公表はドイツのフォン・レーゲル/Eduard August von Regel(1818-1892)により行われました。フォン・レーゲルは1871年よりロシア帝国立セント・ペテルスベルグ植物園のおいて主にロシア人によって採集された植物の研究を行った人物です。
自生地などについて
中央アジアから、中国西部の岩石の露出する丘陵地に多く自生しています。
岩田光氏(湧永製薬)、加藤恒雄氏(広島県立大学)および大野乾氏(Beckman Research Institute of the City of Hope, USA)の3氏によって2000年に発表された”ダマスク・ローズの3つの起源/Triparental origin of Damask roses”の中で、DNA解析の結果、ガリカ、ムスク・ローズとともにこのロサ・フェデツケンコアーナがダマスクの誕生に深く関わっていたということが報告されてから、新たに注目をあびつつあります。
この学術論文はバラ研究者の間でセンセーショナルな驚きをもってむかえられました。バラおよび庭園史の研究で名高い英国のクエスト・リットソン氏はただちにフェデツケンコアーナとダマスクの間にはなんら共通点は見られないと反論しましたが、確かに花色、樹形などには似通ったところは見られません。
わずかにオータム・ダマスクなどダマスクのなかの一部に返り咲きする性質はこのフェデツケンコアーナがもたらしたのだとする解説が説得力があるように思います。さてクセスト・リットソン氏は日本の3氏によるDNA鑑定を覆すことができるのでしょうか。