どんなバラ?
中輪、花弁が乱れがちな深いカップ型の花。
花色は、深紅あるいは深いパープルとなりますが、中心は白を混ぜたように色が薄くなります。
パープルのガリカとして第一にあげられる名花です。
市場へ提供された経緯
従来はオランダのヴァン・シアンがフランスの育種家J. ラッフェイの元へ持ち込み、ラッフェイにより市場へ出されるようになったと解説されていましたが、ジョワイヨ教授は著作『ラ・ロズ・ド・フランス(La Rose de France)』の中で、ヴァン・シアン(Van Sian:”青”)という氏名の不自然さなどを指摘、実際にはルイ・パルメンティエにより作出されたのだろうと推論しました。現在ではこの推論が多くの研究家の賛意を得ています。
品種名の由来
17世紀、フランス王ルイ13世のもとで宰相(在職:1624-1642)として辣腕をふるったリシュリュー枢機卿(1585-1642)にちなんで命名されました。
リシュリュー卿はフランス王権の拡大にほとんど唯一の価値を置いて、それを阻害するすべてを除去しようとした人物です。
ルイ13世の母で摂政であったマリー・ド・ミディシスに認められて政治に携わるようになり、1622年に枢機卿、1624年に宰相と栄達の道を究めました。
王権の拡大のためには、恩のある王太后マリーの失脚も画策し、国内ではプロテスタントを迫害しながら、オーストリーやスペインといったカソリックを国教とする国とも対決し、三十年戦争(1618-1648)では、オーストリー=ハプスブルグ家に対向するため、プロテスタント側に組するなど権謀術策の限りを尽くしました。
政敵も多く、失脚を狙う陰謀も何度か企てられましたが、その都度事前に察知して首謀者を処刑して難を逃れました。時代の流れを読んで権謀術策渦巻く政治世界をたくみに泳ぎきった政治家だったのでしょう。
A・デュマ父『三銃士(ダルタニアン物語)』に登場
リシュリュー卿はアレキサンドロ・デュマ作の長編小説『三銃士(ダルタニアン物語)』の中では紳士的でありながら冷徹で、スパイ網を駆使して王妃の陥れをはかるなど権謀術策をめぐらす、したたかな人物として描写されています。リシュリュー枢機卿の実像はおそらくこんなものであったろうと彷彿とさせる描写です。