バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

マダム・アルディ(Mme. Hardy)

マダム・アルディ(Mme. Hardy)

どんなバラ?

長い苞葉につつまれたつぼみは意図的に飾りつけたかのようです。開花した花は9cmから11cm径、浅いカップ型、ロゼッタ咲きまたはクォーター咲きとなります。花芯には緑芽が生じます。オールドローズとして、”もっとも完璧に近い”としばしば語られる美しさです。
花色は白。ときに刷いたように薄ピンクがはいることがありますが、これはつぼみのときに出ていたピンクが開花しても残ったためと思われます。
甘く、強く香り。
縁にのこ目が強く出る、明るい、グレーがかったつや消し葉。120cmから180cmほどの立ち性のシュラブ。枝は細めに伸びてゆきますので、トレリスに誘引したり、オベリスク仕立てとする必要があります。

マダム・アルディの蕾(Mme. Hardy's bud)
マダム・アルディの蕾(Mme. Hardy’s bud)Photo/Rudolf [CC BY SA-3.0 via Rose-Biblio]

品種名の由来など

1832年、フランス、パリのルクサンブール宮の庭丁であったJ-A ・アルディ(Julien-Alexandre Hardy)により育種・公表されました。交配親は不明ですが、花形の美しさは、ケンティフォリアからもたらされたのではないか、いや、花持ちのよさはガリカの影響が感じられると、さまざまに語られています。
凛として他を圧する気品あふれる白い花。甘くなごむ香り。たまご型の優美な葉。なにひとつ欠点のない“完璧”なバラであると、多くの研究家や愛好家に評されています。
育成者アルディの夫人に捧げました。育種公開当初はフェリシテ・アルディ(Félicité Hardy)と呼ばれたようですが、やがて、”マダム・アルディ”が品種名として定着するようになりました。

育種家や研究家たちが寄せる賞賛

オールドローズの頂点にあると言ってもけして過言ではない、美しい品種です。多くのバラ研究家が惜しみない賛辞を送っています。いくつかご紹介しましょう。 しかし、下でも参照した「いまだ、どんなバラにも凌駕されていない…」(”Graham Stuart Thomas Rose Book”)という言葉がすべてを物語っているのかもしれません。

このバラは、葉に繊毛がないので純粋なダマスクとは言えないが、ふさふさとした樹形、よく整った花は、白バラの中では一番にあげるべきもので、これほど卓絶したバラはない。(”The Rose Amateur’s Guide”, Thomas Rivers)

大きなヒップ(結実)を生み、丸い白花。ブール・ド・ネージュは純粋な白花の八重咲きで…数年前まで、これを超えるものはないと考えられていたが、その予想はみごとに裏切られ、現在ではマダム・アルディが勝利を収めている…(”The Rose Manual “, Robert Buist)


古い白バラの中でも最も美しい品種のひとつだ。純粋なダマスクではなく、(おそらく)その美しさと華やかさの一部はケンティフォリアに由来していると考えられる。房咲きとなる性質はダマスク由来を思わせるが、完璧と言える花形は(他には)ガリカ・ローズの一部にしか見出すことができない。
いまだ、どんなバラにも凌駕されていない。(”Graham Stuart Thomas Rose Book”, Graham S. Thomas)

あるダマスクローズの実生から生み出された。1831年にはじめて開花し、育種者の妻の名前(フェリシテ)がつけられ、1832年に公表された…
1991 年の世界バラ連盟の会合では、史上最も人気のあるバラのトップ 10 のひとつに選ばれた。香りのよい花で、古い庭のバラの中で最も白いとよく言われるが、花芯には時に肌色のようなピンクを帯びることがある。(”Climbing Roses” , Scanniello & Bayard)

”マダム・アルディ”は、美しい形の花がきれいな緑色の目によって引き立てられた、見事な白いバラだ。かつては”嫉妬深い緑の目と表現されたが…これは、緑芽のできない、”マダム・ゾートマン”を羨んでいるためと言われた。
しかし、このように表現した著者は…マダム・ゾートマンにも緑芽ができるのを知らなかったのだと思われる…(”Rose-Biblio”, 2024.12.10閲覧)