バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

三種の白花ダマスク

白花のオールドローズ=アルバ?

7cm径を超える中・大輪花を咲かせる、オールドローズのなかで白花を咲かせる品種は花形や葉などに、ガリカ、ケンティフォリア、ダマスクなどのそれぞれのクラスの特徴があっても、”白花”であることからアルバにクラス分けされる例が多くなっています。

しかし、品種によっては白花を咲かせるものの、クラス=アルバとするだけでは特徴を概括できないので、葉や茎に小さなトゲが密生していかにもガリカ風であるときには、クラス=アルバ/ガリカといったふうにクラスをまたがった表示とすることもあります。

ただし、モスは例外で、白花を咲かせても茎に生じる”苔”をクラス分けの指標として、”白花のモス”とクラス分けがなされ、今日までいくつも残されています。

三種の白花ダマスク~ほんとうにダマスク?

今回、ダマスクローズの見直しを行い、白花ダマスクを三つ紹介させていただきました。いまだ実現できないでいますが、いつの日か、三つの白花ダマスクを並べて鑑賞したいものだと思っています。

マダム・アルディ(Mme. Hardy)
マダム・アルディ
マダム・ゾートマン(Mme. Zoetmans)
マダム・ゾートマン
ボッツアリス(Botzaris)
ボッツアリス

マダム・アルディ
ダマスクの名花としてよく知られていて、クラスの代表種となっています。しかし、グラハム・トーマスは、
「純粋なダマスクではなく…一部はケンティフォリアに由来していると考えられる…完璧と言える花形は(他には)ガリカ・ローズの一部にしか見出すことができない」
と言っています。

マダム・ゾートマン
あまりにもマダム・アルディに似ているのでダマスクにクラス分けされていると言っていいのではないでしょうか。
例によってグラハム・トーマスはこの品種がダマスクであることに疑問を抱いていて、開花当初、淡くピンクが出ることが多いことを指摘し、
「…ガリカのデュセス・ド・モントベロ)によく似ている」
と述べています。

ボツァリス
花形、葉や枝ぶりの形状からダマスク種のひとつとされていますが、グラハム・トーマスやクルスマンなど著名な研究家は、白花であること、本来のダマスクの香りとは微妙に異なることなどから、交配にはアルバが関わったと考えていたようです。
もう一度、グラハム・トーマスに登場してもらいましょう、
「とれもきれいな小さなバラで、花色の白と際立った香りはおそらくロサ・アルバに由来しているのだろう。ヒップ(結実)も本来のダマスクのものではない…」

中・大輪のオールドローズのうち、ケンティフォリアには”ブランシェフルー”など、少ないながらも白花品種があります。
モスは茎に生ずる”苔”が特徴的なので、白花でもモスにクラス分けされるものが何種かあります。
しかし、ガリカにはほんの一部、淡いピンク花から枝変わりした白花ガリカがあるだけで白花は皆無に近いというのが現状です。デュセス・ド・モントベロなど、淡いピンクに花開くガリカは、もっとも美しいオールドローズとして挙げられることが多いですが、白花を咲かせるガリカをがあるのであれば、やはり数少ない白花のケンティフォリアとともにじっくりと鑑賞したいものだと思います。