バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

ル・グロン・スルタン(Le Grand Sultan)

どんなバラ?

11cmから13㎝径の大輪、40弁ほどのカップ型となる花形。
花芯はストロング・ピンク、弁の縁は淡く色抜けする花色となります。
強い香り。
トゲの少ない、120㎝から180㎝高さの直立性のシュラブとなります。
春一季咲き、ガリカまたはケンティフォリアにクラス分けされています。

不確かな育種年、育種者

育種者、育種年については2説あり、まだ確定的ではないようです。

1815年以前、育種者ジャック=ルイ・デスメ(Jacques-Louis Descemet )説
ジャン-ピエール・ヴィベール(Jean-Pierre Viber)が1820年から2、3年おきに発行していたバラ解説書『バラの命名とクラス分けに関する考察(Observations sur la Nomenclature et le Classement des Roses)』の1820年版に、デスメ作出として記載されていたことから、

「1820年以前、デスメ作出」あるいはデスメが実際には1815年にバラの資産をすべてヴィベールに譲渡したことから、「1815年以前、デスメ作出」とされていました。

1799年以前、育種者不明説
ところが、メアリー・ローレンス(Mary Lawrence)によるのバラ画集『自然界におけるバラ・コレクション(A Collection of Roses from Nature)』のなかに”Sultan Rose”というケンティフォリア図があることが見いだされ、従来のデスメ育種説には否定的な見解が出されるようになっています。

スルタン・ローズ(Sultan Rose)
’Sultan Rose’ Illustration/Mary Lawrence, “A Collection of Roses from Nature” 1799 [Public Domain via The New York Public Library Digital Collections]

1799年という年は、年代的にはデスメが育種に携わっていた時期に重なり、彼の初期の作出種の可能性もあるのですが、他の品種年予想よりもかなり早いので、
1799年以前、育種者不明とするのが適切だとする新説です。個人的にはこの解釈に組したいと思っています。

別名、セレスト(Céleste)をめぐる混乱

このル・グロン・スルタンはは下記のような別名で呼ばれることもあります。
セレスト(Céleste)
グロン・ターバン(Grand Turban)
スルタン・ローズ(Sultan Rose)

やっかいなのはCélesteという品種名です。”天空”という意味あいのためか、品種名として人気があり、同名・異種があります。

  • Céleste -1739年以前、育種者不明のアルバ、セレエスシャルという別名のほうがポピュラー
  • Céleste- 1810年以前、作出者、アンドレ・デュポン(André Dupont )
スレスト/スレスティアルCeleste/Celestial))
‘Celeste/Celestial’