どんなバラ?
7cmから9cm径、35弁前後の丸弁咲き、またはカップ型、花弁が乱れ気味となる花形。
開花時、クリムゾンであった花色はすぐにパープルの色合いが濃くなります。
強く香ります。
幅広の照り葉、細く固い枝ぶり、少ないけれど鋭いトゲ、90cmから120cm高さの小さめのシュラブとなります。
秋に返り咲きする性質が見られることから、ダマスク・パーペチュアルにクラス分けされています。
育種者、育種年
この品種についての情報の初出は、1830年に刊行された『ベルギーの栄光;10の歌による国民詩(La gloire Belgique; poème national en dix chants)』第1巻に記載された記事だとのことです。
私たちのバラの栽培は今世紀の初めまで遡る。 1807 年に、私たちの元にいくつかの優れた品種が登場した。
…スウェールズ弟(Swales cadet)は、ロイヤル・ターバン( Turban royal)、ロワ・ド・プルプル( Roi de pourpre)など 17 種類の優れた品種を獲得した。
こうした愛好家はブリュッセル出身だ。
記事で言及されているスウェールズ弟は兄とともに園芸家として知られていたと思われます。彼らが育種家であったのか、あるいは蒐集家であったのかはよく分かっていません。
このことから、1807年にはすでに出回っていたとされています。しかし、後述しますがこの品種がロズ・デュ・ロワからの枝変わり種なのか、あるいはよく似た別品種なのかはっきりしていません。育種年、育種者とも不明とするのがよいと思っています。
19世紀ころ著名であったバラ研究家トマス・リヴァース(Thomas Rivers)は、1846年に刊行された著作『バラ愛好家ガイド(The Rose Amateur’s Guideローズ・アマチュアズ・ガイド)』のなかで枝変わり説に立って次のように述べています。
…最近では、ロズ・デュ・ロワを元品種として優れた品種が生み出された。人気のある品種によくあるように別名もあるが、正式な名称はロズ・デュ・ロワ・ア・フラー・プルプルである。
フランスのある生産農家は、すこし大げさにモガドール(Mogador;註)と名付けた…
実にこれは見事なバラで、色は鮮やかな深紅で、わずかに紫がかっている。カップ型の花形で、親株(註:ロズ・デュ・ロワのこと)よりも少し八重咲き。そしてその習性はより強健だ。
註:モガドール/Mogadorは、現在のモロッコ、エッサウィラの古い名称です。北アプリカ大西洋岸の良好な停泊港として古くから栄えました。ポルトガルの占有が続いたため、城壁に囲まれた、ポルトガルと北アフリカの建築様式が混在する美しい町並みであまねく知られています。

枝変わりorよく似た別品種?取り違え説も
由来についての二つの説
この品種の由来については二通りの説があり、また、取り違えがあったと考える研究家もいます。
①ロズ・デュ・ロワ(Rose du Roi)から枝変わりで生じた(トマス・リヴァースなど)

②ロズ・デュ・ロワより花色は色濃く、弁数も多いのでよく似た別品種だ
今日、疑問を呈する研究者のほうが多く②の理解のほうが主流となっているようです。
よくある取り違え
デスメが育種したガリカにロワ・デ・プルプル(Roi des Pourpres-1815以前)という品種があります。ロズ・デュ・ロワ・ア・フラー・プルプル(Rose du Roi à Fleurs Pourpres)と品種名が類似していることから、よく混同されます。
