どんなバラ?
7cmから9cm径、35弁前後カップ型となる花形、花芯に緑芽ができることもあります。
花色はパープリッシュ・ピンク。
強い香り。
縮み気味の大きなつや消し葉、小さなトゲが密生する茎、150cmから180cm高さの中型のシュラブとなります。
濃いめの花色からかガリカにクラス分けされることもありますが、大きな縮れ気味の葉などがケンティフォリア・ブラータに似ていることからケンティフォリアにクラス分けされることのほうが多いようです。

育種者、育種年
1811年、クロード-トマ・グラパン(Claude-Thomas Guerrapain)が刊行した『婦人のためのバラ年誌(Almanach des Roses, dédié aux dames)』というバラ解説本のなかで以下のように詳細に記述されています。
そのことからジャック=ルイ・デスメにより育種され、1811年には市場に出まわっていたことが判明していますが、どれほどさかのぼれるかは分かっていません。
細く繊細な木と葉。
萼片は細長く、上部が狭くなっています。
ピンク色のつぼみは先細りで萼片でまばらに覆われています。
形の整った花、直径 2.5 インチほど、花びらはカールしており、ライラックに近い美しいピンク色に白が混じり、優雅なユーフロシネと親切なタリアという仲間の女神(註;以下の欄をご参照)と同様に香りがよく、同じ時期に開花します。
品種名の由来~ギリシャ神話の三女神について
アグライアはギリシャ神話に登場する女神です。ユーフラシーヌ・レレガント(Euphrosyne l’élégante)とタリー・ラ・ジャンティーユ(Thalie La Gentille)を加えた三女神を”美と愛”を象徴するものとして、古くから絵画などの題材とされています。
デスメが作出した品種もこのアグライアに加え、ユーフラシーヌ(Euphrosyne)とタリア(Thalia)があり、いずれも今日まで伝えられています。
この点は前述の、クロード-トマ・グラパン(Claude-Thomas Guerrapain)『婦人のためのバラ年誌(Almanach des Roses, dédié aux dames)』で触れましたので、ここではそれを再録します。
アグライア(Aglaïa)
ユーフラシーヌ・レレガント(Euphrosyne l’élégante)
タリー・ラ・ジャンティーユ(Thalie La Gentille)



‘左アグライア:中ユーフラシーヌ:右タリー’ Photo/Rudolf [CC BY SA-4.0 via Rose-Biblio]
いずれも、ギリシャ神話に登場する三美神、アグライア、ユーフラシーヌ、タリー(タリア)にちなんで命名されたピンクあるいはモーヴのケンティフォリア/ガリカです。
三種ともジャック-ルイ・デスメにより育種・公表されました。グラパンの著書へのリストアップが初出のため、三種とも1811年以前に育種されたが、正確にはいつとは分かりません。
三美神はたびたび絵画や彫刻の題材とされ、多くの作品が残されています。下の画像はサンドロ・ボッティチェッリの傑作『春(プリマヴェーラ)』の三美神を描いた部分です。

アルザスのシュミット(J. B. Schmitt/Alsace) が育種し、ドイツのペーター・ランベルトにより市場へ提供されたランブラー三種にも同じ名前が付けられています。育種年が新しいためか、三美神にちなんだバラというとこちらのシュミット作出のほうを思い浮かべる方のほうが多いと思います。



‘左アグライア:中ユーフラシーヌ:右タリア’ Photo/Rudolf [CC BY SA-4.0 via Rose-Biblio]