バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

ベル・ビブリス(Belle Biblis)

ベル・ビブリス(Belle Biblis)

どんなバラ?

7から9㎝径の中輪、40弁ほど。開花はじめはカップ型、熟成するにしたがい丸弁咲きへと移ってゆきます。
ビビット・ピンクから次第にパープリッシュな色合いが出てモーヴ(藤色)といってよい花色へ変化します。
強香。
120cmから150cm高さのシュラブとなります。

育種者、育種年

1815年以前にジャック=ルイ・デスメ(Jacques-Louis Descemet )により育種されました。
交配親の詳細は不明です。

ジャン-ピエール・ヴィベール(Jean-Pierre Viber)が1820年から発行していたバラ解説書『バラの命名とクラス分けに関する考察(Observations sur la Nomenclature et le Classement des Roses)』の1820、1824年版にデスメ作出として記載されています。。

デスメがヴィベールへ商権、施設などを移譲したのが1815年でした。ここでは確実性を重視して、1815年以前に育種されたとしておきます。

ジョワイヨ教授の解説がすばらしいので下記引用しました。

習性:典型的なガリカ種よりも直立性が低い。多数の小さな棘があり、剛毛がある。
葉:明るい緑葉が繁茂する。楕円形の小葉は3枚しかない場合もある。
花:よく開花する。単生または2~4輪の房咲き。中型で平形、熟成すると花弁が反り返る。萼片は長い。
色:紫色で、わずかに斑点がある。
1828年に出版されたデスポルテスの著書『ローズタム・ガリカム』ではこの品種をデスメ作出であるとした。しかし、1815年以降デスメの後継者となったヴィベールのカタログには、「ベル・ビブリス」はリストアップされていないが、代わりにビブリスが記載されている。おそらく同じバラである。
ジュール・グラヴローは、この品種は1815年以前にマルメゾンのジョゼフィーヌのコレクションのひとつと想定し、1815年以前に遡ると考えたようだ…

(『フランスのバラ/La Rose de France』、1998)

ビブリス(Biblis/Byblis)をめぐる神話

ビブリス(Biblis/Byblis)はギリシャ神話に登場する若い娘です。
兄であるカウノスに恋をして、一緒になることを強く願い、なんども言い寄るがその度に拒絶され、兄カウノスはついには妹を避け国を去ろうとします。
ビブリスは兄を追いかけ続けます。しかしやがて疲労困憊して倒れ、みずからの涙に溶けて泉に変わってしまったと伝えられています。(Wikipedia etc.)

‘Byblis’ Painting/William-Adolphe Bouguereau [Public Domain via Wikimedia Commons]

ギリシャの偉大な作家オウィディス(Publius Ovidius Naso:BC43-AD17)は『変身物語(Metamorphoses)』においてギリシャ・ローマ神話に伝えられている変身譚をつづってゆきます。泉に変身したビブリスの他にも、スイセンに変わったナルキッソス、こだまに変わったエコーなどは特によく知られていると思います。