バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

ファニー・ビア(Fanny Bias)

ファニー・ビア(Fanny Bias)

どんなバラ?

9㎝から11㎝径の中輪または大輪、ロゼッタ咲き。しばしば花芯に緑芽が生じます。
ラベンダー・シェイド気味の明るいピンク、外輪が淡い色合になることが多い美しい品種です。
残念ながら香りはあまり期待できません(微香)
120㎝から180㎝高さとなるシュラブ、春一季咲きのガリカです。

育種者、育種年および品種名の由来など

ジャック=ルイ・デスメにより1811年以前に育種されたとみなされています。その美しさゆえでしょう、デスメの育種品種のなかでは早い時期から知られていたようです。

品種名には変遷がありました。デスメが育種した当初はラ・プル・ベル(La plus Belle:”最上の美”)と命名したようです。ジャン-ピエール・ヴィベール(Jean-Pierre Viber)が1820年から発行していたバラ解説書『バラの命名とクラス分けに関する考察(Observations sur la Nomenclature et le Classement des Roses)』の1820年版では、ラ・プル・ベルとファニー・ビアは別品種としてリストアップしていますので、本来は別の品種だったのかもしれません。
際立った美しさから広く愛され、アタリ(Athalie)、デュセス・ド・レジオ(Duchesse de Reggio)と別名で呼ばれることもあったようです。
ファニー・ビアは19世紀初頭人気のあったダンサーです。

Lithograph/Godefroy Engelmann [Public Domain via Wikimedia Commons]

この品種の解説もまたジョワイヨ教授の解説が秀逸です。

別名:アタリ―(Athalie)、デュセス・ド・ダッチェス・ド・レッジョ(Duchesse de Reggio)、ラ・プル・ベル(La plus belle)
習性:直立性の低木で、棘はないが剛毛がある。
葉:中緑色で、楕円形の葉。
花:単生または対生。かなり大きく、八重咲きで平ら。雄しべがいくつか見える。小さく柔らかい緑色の目。長い葉状の萼片。
色:淡いピンク色で、周囲はピンクがかった白。
香り:弱い

ヴィベールはこの品種を 1818年に入手し、翌年に市場へ提供した。実際、1826年のピロールによる以下のコメントは、この品種がデスメ種に由来し、1811年以前から存在していたことを示している。
「アタリー。この素晴らしいバラは、15年前(つまり1811年)からムッシュー・ソメソンの手によって自根で栽培されており、ソメソン氏はこれを「レッジョ公爵夫人」と名付けた。
…売れ残ったバラを入手したヴィベールは、その後カタログに掲載し、一般向けに販売した。」

ファニー・ビア(1785-1825)は、(ナポレオン)帝政時代の著名なダンサー。彼女は1817年にオペラ座の主役ダンサーになったが、その前年にヴィベールはこの品種を入手したと主張した…
(『フランスのバラ/La Rose de France』、1998)