メアリー・ロヴェット(Mary Lovett)

5cmから7㎝径、開花当初は25弁ほどの高芯咲き、しだいに乱れがちな丸弁咲きとなります。
花色は白またはわずかにクリームがはいったようなオフ・ホワイト。
明るい色合いの照り葉、固めの枝ぶり、350cmから500cm高さのクライマーとなります。頻繁とは言えませんが秋に返り咲きすることがあります。
育種の経緯など
1915年、アメリカのW. ヴァン・フリート(Dr. Walter van Fleet)により育種・公表されました。ヴァン・フリートが育種した品種の販売に携わっていたロヴェット一家のメアリーにちなんで命名されました。
種親はウィックラーナ、花粉親は淡いイエローの大輪花を咲かせるHT、カイゼリン・オーグスト・ヴィクトリア(Kaiserin Auguste Viktoria)。この組み合わせは実はドイツのヘルマン・アルブレヒト・ヘッセが1909年に育種・公表したフリューレン・オクタヴィア・ヘッセと同じです。花色はともに白ですが両品種には花形に違いがあり、このメアリー・ロヴェットはむしろヴァン・フリート由来の名品種ニュー・ドーンによく似ています。そのことから、”ホワイト・ニュー・ドーン”という別名で呼ばれることもあります。
エミリー・グレー(Emily Gray)

9cmから11cm径、セミ・ダブル、乱れ勝ちは平咲きの花が数輪ほどの”連れ”咲きとなります。
開花時は鮮やかなイエロー、熟成すると次第に褪色して、ラスト(さび色)がはいったようにくすんだ色合いへと変化してゆきます。
強く香ります。
非常に深い色合の照り葉、じょうぶで旺盛に成長し、500cm高さまで達することもあるクライマーですが、柔らかで、クライマーというよりはランブラーと考えるほうがよい枝ぶりです。
育種の経緯など
1918年、英国のアマチュアのバラ育種家であった、A.H. ウィリアムズ(Dr. A.H. Williams)が育種しました。
種親はライト・イエロー、シングル咲きのウィックラーナ・ランブラー、ジャーシー・ビューティ(Jersey Beauty)、花粉親はアプリコット・オレンジのチャイナローズ、コンテス・ドュ・カイラ(Comtesse du Cayla)が用いられました。
ウィリアムの姉(または妹)にちなんで命名され、英国カント社を通じて公表されました。公表から、今日まで、最も評価の高いイエローのつるバラのひとつとされています。
ウィリアムはこの品種の公表の後、1933年から翌年にかけて、英国バラ協会の会長に就任しました。
ピュリティ(Purity)

9cmから11cm径、9から16弁のセミ・ダブル、平型の花形。3輪から5輪ほどの小さな房咲きとなります。
花色は名前(Purity:純粋)にふさわしい純白。
甘い強い香り。
中くらいのサイズの、多少銅色の入った照り葉、柔らかな枝ぶり、350cmからときに500cmまで達する大きめのクライマーとなります。
育種の経緯など
1917年、アメリカのJ. ファレル( James A. Farrell )より育種され、フープス&トーマス社(Hoopes Bros. & Thomas Co.)を通して公表されました。
種親:無名種(ウィックラーナとディープ・レッドのHT、マリオン・ディンジーの交配による)
花粉親:ピンクのHT、マダム・カロリーヌ・テストゥー(Mme. Caroline Testout)
この交配組み合わせは、フープス&トーマス社が公表した他の品種、ピンクのクライマー、クリスティン・ライト、深い赤のクライマー、アメリカン・ビューティと同じ内容です。同じ交配組み合わせから、ピンクと赤と白のクライマーが育種されたということですが、バラ交配の不思議を深く感じます。
ブリーズ・ヒル(Breeze Hill)

9cmから11cm前後、30弁を超える多弁、丸弁咲き、または、ロゼッタ咲きとなる、端正な花形。
暖かみを感じるアプリコットの花色、花弁のひとつひとつにピンクが薄くのった色合となります。次第に花弁の外縁は淡い色合へと変化しますが、花芯は色が残り、美しい花姿となります。軽く香ります。
いくぶんか蒼みをおびた葉は、他の品種にはあまり見られない特異なものです。大きいトゲに覆われた横這いする強めの枝ぶり。成長は遅いものの、枝を伸ばし続け、400cmから600cm高さへ達する大株となるクライマーです。
育種の経緯など
1918年、米国の名育種家、W.ヴァン・フリート(Dr. Walter van Fleet)が育種し、1926年にアメリカ・バラ協会(ARS;American Rose Society)において公表され、世に出るきっかけとなりました。市場に出まわるようになるのはなぜか、さらに3年後の1929年になってからでした。
種親にはウィックラーナ、花粉にはオレンジ・レッドのHT、ボーテ・ド・リヨン(Beauté de Lyon;リヨンの美)用いられたというのが通説ですが、葉、樹形などの特徴から、中国四川省西部の山間部に自生する原種、ロサ・ソウリエアーナ(R. soulieana)の影響を感じるという解説もあります。(Stevens, G.A., “Climbing Roses”)
ウィックライアナ系の品種ではもっとも大輪花を咲かせる品種のひとつと言われています。名花ニュー・ドーンの親品種である、ドクター・ヴァン・フリートよりも高い評価を与える研究者もひとりやふたりではありません。
アメリカ、ペンシルバニアのバラ愛好家で、1930年から2年間、米国バラ協会(ARS)の会長でもあったマクファーランド博士(Dr. J. Horace McFarland:1859-1948)の住いで個人のバラ園として当時著名であったブリーズ・ヒル(凍りついた丘)にちなんで命名されました。
博士は庭植えバラ育成者の集まりに止まっていたARSを、広くバラ愛好家を会員に募ることにより組織だった大きな協会へと発展させるのに多大な貢献がありました。
アルベルティーヌ(Albertine)

7cmから9cm径、カップ型に開いた花は、次第に花弁が折り返って、熟成したティー・ローズのような形へと変化します。このすこしくずれたような艶のある花姿に魅了されます。
淡いピンク・サーモンの花色となりますが、微妙な色合いがくずれた花姿とよくマッチングします。
多少香ります。(中香)
銅色が出る、暖かみのある照り葉、大きなトゲのある少し固めの横這いする枝ぶり、300cmから450cmほどまで枝を伸ばすクライマーとなります。
育種の経緯など
1921年、フランスのバルビエ兄弟(Barbier Freres & Compagnie)により育種・公表されました。確定的とは言えませんが、マルセル・プルーストによる自伝的な長編小説『失われた時を求めて』に登場するヒロイン、アルベルティーヌ・シモネ(Albertine Simonet)にちなんで命名されたのではないかと思います。
種親にはウィックラーナ、花粉親にはオレンジ・ピンクのHT、ミセス・アーサー・ロバート・ウォーデル(Mrs. Arthur Robert Waddell)が使われました。
ARS(米国バラ協会)では、ラージ・フラワード・クライマーとして登録されています。これは、枝が比較的太め、固いこと、また、花姿がハイブリッド・ティーの花形に似通っていることからくるのだと思われます。
しかし、全体から受ける印象としては、ウィックラーナ・ランブラーと考えたほうが適当と思われます。
メアリー・ワラス(Mary Wallace)

7cmから9cm径、セミ・ダブル、乱れ勝ちなカップ型となる花が、枝いっぱいに咲き誇る房咲きとなります。
花色はミディアム・ピンク、サーモン気味の暖かみが出たり、逆にラベンダー・シェイド気味となって冷涼感のある花色になるなど、変化があります。
小さめの丸みを帯びた照り葉、350cmから500cm高さへおよぶ、非常に柔らかな枝ぶりのランブラーとなります。
育種の経緯など
1922年、1902年、アメリカのW. ヴァン・フリート(Dr. Walter van Fleet)により育種・公表されました。
種親にはウィックラーナ、花粉親には詳細不明のピンクのHTが用いられたようです。
玄関までの小路を飾ることを念頭に置いて、ドアウェイ・ローゼス(Doorway Roses)として数多くの美しいランブラーやクライマーを生み出した、ヴァン・フリートでしたが、このメアリー・ワラスはとりわけ多花性と優雅な樹形が愛されました。
プリムヴェール(Primevère)

9cmから11cm径、50弁から70弁ほど、繊細な花弁が重なりあったような丸弁咲きの花形となります。
花色は淡いイエロー、花芯が色濃く深みを増して美しい色合いとなります。
香りはわずか。
明るい色調の照り葉、240cmから360cm高さの、細く、しなやかな枝ぶりのランブラーとなります。500cm超えなど大株になりがちなウィックラーナ・ランブラーの中にあっては比較的小さめです。
育種の経緯など
1929年、フランスのバルビエ兄弟(Barbier Freres & Compagnie)により育種・公表されました。
種親にはウィックラーナ、花粉親にイエローのHT、コンスタンス(Constance)が用いられました。Primevèreとはプリムラ(西洋桜草)のことです。
クープ・ドール(Coupe d’Or)
画像は下記サイトで。
https://www.rosier-pepiniere.com/rosiers-grimpants/178-coupe-d-or.html
7cmから9cm径、名前(黄金の杯)の通りのカップ咲きの花形、40弁を超える多弁、花弁が密集する花芯には緑のボタン芽ができることもあります。
明るい、ミディアム・イエローの花色。周辺部はいくぶんか退色し、淡い色合に変わり、花芯の濃いめのイエローとのコントラストが鮮やかです。
強く香ります。
幅広でまるみのある深い色合の照り葉。新芽の枝の紅色が目を惹く、比較的柔らかめな、クライマーとランブラーの中間的な固さの枝ぶり、250cmから350cm高さとなります。
育種の経緯など
1930年、フランスのバルビエ兄弟(Barbier Freres & Compagnie)により育種・公表されました。
アプリコットのシングル咲きのウィックラーナ・ランブラー、ジャコット(Jacotte)の実生から生み出さたとのことです。すでに失われてしまったのではと言われていましたが、最近、フランスのナーサリーから再び提供されるようになりました。
ウェディング・デイ(Wedding Day)

3cm径ほどの小輪、シングル咲きの花が寄り集うような房咲きとなります。花色は白またはわずかに濁りのあるオフ・ホワイト。花芯のイエローのシベがアクセントとなります。
強い柑橘系の香り。たまご型の明るい色合いの照り葉、ときに500cm高さを超える大型のランブラーとなります。
育種の経緯など
1950年、英国のF. C. スターン(Sir Frederick C. Stern)により育種・公表されました。
種親はロサ・シノウィルソニー(R. sinowilsonii)。中国四川省などで見られる大輪の白花品種ですが、原種ではなく、ロサ・ロンギクスピス(Rosa longicuspis)からの選別種かもしれないとされているようです。花粉親は園芸種のようですが、特定されていません。
育種者スターン卿は英国南部ウエスト・サセックスに庭園を保持していたようです。芍薬の研究書なども公刊しています。
バラの育種としてはこの”ウェディング・デイ”が知られるだけですが、卿と婦人の結婚記念日である6月26日に初めて開花したことから”ウェディング・デイ”と名付けられたとのことです。


