バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

マント―・プルプル(Manteau Pourpre)

マント―・プルプル(Manteau Pourpre)

どんなバラ?

9cmから11㎝径の大輪、40弁を超える多弁のロゼッタ咲き。
花芯は濃いカーマイン/バーガンディ。あるいは、紫にわずかに赤みをおびたマルベリー色となります。全体としては均一な色合いですが、花弁縁はいくぶんか色抜けすることが多いと思います。
強い香り。
深い色合いのつや消し葉、120㎝から150㎝高さほどのシュラブ。
一季咲きのガリカです。

育種者、育種年など

現在、受け入れられている解釈
1798年以前、ドイツのシュヴァルツコフ(Daniel August Schwarzkopf)により育種されました。交配親の詳細は知られていません。

マントー・プルプルとは「紫色の外套」という意味です。19世紀の初め、フランスで紹介されると、この品種も驚きをもって迎えられました。

多くの別名
この品種名は花容をあまりに直接的に表現していることからおもむきに欠けると思われたのでしょうか、多くの別名が生じてしまいました。

ポーシア(Porcia)、ベル・ブルボン(Belle Bourbon)、Pontiana(ポンティアナ)、アンドレ・デュポン(André Dupont)、ルージュ・フォルミダーブル(Rouge formidable)、グランド・コンデ(Grande Condé)、ヌーヴェル・ブルボン(Nouvelle Bourbon)など

育種者、年などの現在説の根拠

1783年に刊行された『Verzeichnis des Landschaftsparks von Schönbusch(ショーンブッシュ公園における植栽リスト)』の中に庭園丁であったクリスチャン・フランツ・ボード(Christian Franz Bode)」が作成したバラ・リストがあるが、その中にシュワツコフが育種したと思われるものが数多く含まれている。
マントー・プルプルはそのうちのひとつである。

1811年、クロード-トマ・グラパン(Claude-Thomas Guerrapain)が刊行した『婦人のためのバラ年誌(Almanach des Roses, dédié aux dames)』というバラ解説本のなかで次にように詳細に記述されている。

…色はとても新鮮で、暗く鮮やかなピンクです。
あまり多弁ではありませんが、とても心地よい香りを放ちます。
花の縁の花びらは、マホカ(註:ベル・スルタンの別名)の花びらよりも濃い赤で縁取られています。(花弁の)裏は艶出しされてかのようです。この特徴的な模様が”紫の外套(マント―・プルプル)”という名前をもたらしたことは間違いありませんが、(実際には)紫色ではないため、この名前は似合いません…
一般的に、このバラは完璧な種の一つで、5月30日頃に開花します。

”バラの画家”ピエール=ジョゼフ・ルドウゥテはロサ・ガリカ・ポティアナ(Rosa gallica Pontiana)という品種名で美しい水彩画を残しています。

Verzeichnis des Landschaftsparks von Schönbusch, 1783
“Rosa gallica Pontiana”, watercolor by Pierre-Joseph Redouté [Public Domain via Wkimedia Commons]