どんなバラ?
7㎝から9㎝径、26から40弁ほどの中輪、ダブル咲き。花芯に色抜けした小さな花弁が残り、緑芽となることもあります。
花色はミディアム・ピンク、開花当初は強めに色が出て、ストロング・ピンクとなることが多いようです。
マイルドな香り(中香)。
たまご形のつや消し葉、120㎝から250㎝高さほどの中型のシュラブとなります。
花色、花形、こんもりと茂る大株となることが多いことから一季咲きのダマスクにクラス分けされることが一般的です。しかし、後述するジョワイヨ教授の解説のように葉や茎に密生する紅のトゲなどガリカの特徴が見れることから、ダマスクとガリカの交配から生み出されたのではないかと解釈されています。
2001年に刊行された『ヴィルヘルムショーネのバラ コレクション(Rosen-Sammlung zu Wilhelmshöhe)』における記述、
「このバラは、ヴィルヘルムショーネ公園に200年以上にわたって立ち続けている」
がこの品種の希少さを端的にあらわしていると思います。
別名、取り違え?
この品種はペルル・フォン・ヴァイセンシュタイン(Perle von Weißenstein:”ヴァイセンシュタインの真珠”)という品種名で世に出ましたが、フランスで流通するようになると、 フランスのデスメが育種したラ・ネグレス(La Négresse :”黒人女性”)と混同される例も見られるようになりました。ピンクの花色と”黒”をイメージさせる品種名とのアンバランスからすぐに間違いとされるようになり、現在では元の名前であるペルル・フォン・ヴァイセンシュタインという品種名で統一されています。
育種者、育種年など
世界最初の園芸バラか?~現在、受け入れられている解釈
1773年ころ、ドイツのシュヴァルツコフ(Daniel August Schwarzkopf)により育種されたと推測されています。
ドイツにおいて最も早く育種された園芸バラであり、おそらく、バラ育種史上においても意図的に育種された最も早く世に出た園芸バラ、世界最初の園芸バラと言ってもいいのではないかと思っています。
交配親の詳細も不詳のままですが、ダマスクとガリカの交配によるのだろうとされています。
育種者、年などの現在説の根拠
ヴァイセンシュタイン城のローズガーデンは1765年ころに作られ、1775年には完成されたとみなされている。
1777年に発行された『ブッチャーズ、ヴァイセンシュタインの樹木および灌木カタログ(Böttcher’s catalogue of the Trees and Shrubs of Pleasure Garden of Weissenstein)』にはシュワツコフが育種または蒐集したバラが記載されている。リスト内には品種名の明記はないものの、現在でも見ることができるペルル・フォン・ヴァイセンシュタインはシュワツコフが育種したバラのうち、もっとも早いものであることが知られている。
1815年、ボタニカル・アーティストであるサルモン・ピナス(Salomon Pinhas)はバラのイラスト集『Rosen-Sammlung zu Wilhelmshöhe(ヴィルヘルムショーンにのバラコレクション)』にもペルル・フォン・ヴァイセンシュタインは掲載されている。

ジョワイヨ教授による解説
ガリカほどの直立性ではないが、高さは 2 m に達する。多くのフック状のトゲ、剛毛は少なく、葉は薄緑色、小葉は楕円形で、花は 3 ~ 12 個が房状に咲く。
(花は)中型で、八重咲き、カップ型で、萼片は長く、(花色は)パープリッシュ・ピンク、花弁裏はピンク、香りは中程度。
この品種は、ドイツのカッセル近郊にあるヴァイセンシュタイン城 (現在のヴィルヘルムスヘーエ) の主任庭師、ダニエル・ アウグスト シュヴァルツコップの古い栽培品種のひとつだ…
(”La Rose de France”, Francois Joyaux, 1998)