バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

ナルキス・ド・サルヴァンディ(Narcisse de Salvandy)

Photo/Krzysztof Ziarnek, Kenraiz [CC BY SA4.0 via Wikimedia Commons]

どんなバラ?

中輪または大輪、40弁ほどの丸弁咲き。
花色はチェリー・レッドまたはディープ・ピンク。古い記述によると花弁縁に白く色抜けするとのことです。
強い香り。
深い葉色の艶消し葉、120㎝から150㎝高さの、比較的小さなシュラブとなります。

育種の経緯と品種名の由来

育種者はパルメンティエですが、1843年、パルメンティエと親密な関係にあった園芸家ルイ・ヴァン・ホウテにより市場に提供されました。
19世紀初頭、ナポレオン没落後のフランス復古王制時に政治家として活躍した、ナルキス=アシル・サルヴァンディ(Narcisse-Achille de Salvandy:1795-1856)へささげられました。

花色の変異について

現在入手可能なナルキス・ド・サルヴァンディは上の画像のように、大輪、オープン・カップ型または丸弁咲き、花色はモーヴ(藤色)気味の深いピンクとなるものです。
しかし、ヴァン・ホウテが刊行した園芸誌『ヨーロッパの温室/庭植え草花(Flore des serres et des jardins de l’Europe )』1850によればディープ・ピンク/チェリー・レッドの花弁に白い覆輪が入る珍しい花色となっています。

ナルキス・ド・サルヴァンディ(Narcisse de Salvandy)
“Narcisse de Salvandy” Illustration/from “Flore des Serres et des Jardins de l’Europe” edited by Louis Benoit Van Houtte、1850 [Public Domain. The BHL considers that this work is no longer under copyright protection]

ジョワイオ教授の解説

オールドローズ研究の権威であるフランスのジョワイオ教授は著書『ラ・ロズ・ド・フランス(La Rose de France)』のなかで、本来の品種は”覆輪種”であろうと記述しています。教授の解説から少し引用してみましょう。

…この品種は、アンギャンの有名な育種家ルイ・パルメンティエによるもので、フランスの政治家で文部大臣を務め、アカデミー・フランセーズ会員でもあったサルヴァンディ伯爵(1795-1856)に捧げられたものだ…
園芸家ルイ・ヴァン・ホウテは…「花はかなり大きく、鮮やかな赤い花びらが6列から8列あり、全周にクリーム色の白い帯がある。この帯は花びらの中央まで伸び、基部で半分に切られていることがよくあり、中央に美しい黄色の雄しべが見える」と解説している。
1847年の競売時(訳注:パルメンティエの死去後)、彼のコレクションにはこの品種の標本がふたつしかなかった。ひとつはスイスの収集家 Escher-Zollikofer 氏に販売され、もう ひとつは Van Houtte 氏に販売された。この 2 番目の標本からこの品種が私たちの手に渡ることになったのだ…

オリジナルは失われてしまったか、または、枝接ぎを重ねているうちに先祖返りしてしまい、覆輪が失われてしまったと思われます。