どんなバラ?
中輪または大輪、40弁ほどの丸弁咲き。
花色はチェリー・レッドまたはディープ・ピンク。古い記述によると花弁縁に白く色抜けするとのことです。
強い香り。
深い葉色の艶消し葉、120㎝から150㎝高さの、比較的小さなシュラブとなります。
育種の経緯と品種名の由来
育種者はパルメンティエですが、1843年、パルメンティエと親密な関係にあった園芸家ルイ・ヴァン・ホウテにより市場に提供されました。
19世紀初頭、ナポレオン没落後のフランス復古王制時に政治家として活躍した、ナルキス=アシル・サルヴァンディ(Narcisse-Achille de Salvandy:1795-1856)へささげられました。
花色の変異について
現在入手可能なナルキス・ド・サルヴァンディは上の画像のように、大輪、オープン・カップ型または丸弁咲き、花色はモーヴ(藤色)気味の深いピンクとなるものです。
しかし、ヴァン・ホウテが刊行した園芸誌『ヨーロッパの温室/庭植え草花(Flore des serres et des jardins de l’Europe )』1850によればディープ・ピンク/チェリー・レッドの花弁に白い覆輪が入る珍しい花色となっています。
ジョワイオ教授の解説
オールドローズ研究の権威であるフランスのジョワイオ教授は著書『ラ・ロズ・ド・フランス(La Rose de France)』のなかで、本来の品種は”覆輪種”であろうと記述しています。教授の解説から少し引用してみましょう。
…この品種は、アンギャンの有名な育種家ルイ・パルメンティエによるもので、フランスの政治家で文部大臣を務め、アカデミー・フランセーズ会員でもあったサルヴァンディ伯爵(1795-1856)に捧げられたものだ…
園芸家ルイ・ヴァン・ホウテは…「花はかなり大きく、鮮やかな赤い花びらが6列から8列あり、全周にクリーム色の白い帯がある。この帯は花びらの中央まで伸び、基部で半分に切られていることがよくあり、中央に美しい黄色の雄しべが見える」と解説している。
1847年の競売時(訳注:パルメンティエの死去後)、彼のコレクションにはこの品種の標本がふたつしかなかった。ひとつはスイスの収集家 Escher-Zollikofer 氏に販売され、もう ひとつは Van Houtte 氏に販売された。この 2 番目の標本からこの品種が私たちの手に渡ることになったのだ…
オリジナルは失われてしまったか、または、枝接ぎを重ねているうちに先祖返りしてしまい、覆輪が失われてしまったと思われます。