バラ、特にオールドローズが好きで名前の由来や育種の経緯などを調べています。
宿根草や葉色が美しい草花や灌木などをアレンジしたバラ咲く庭を愛でるのも長年の夢です。

アナイス・セガラ(Anaïs Ségalas)

アナイ・セガラ(Anaïs Ségalas)
Photo/Rudolf [CC BY SA-3.0 via Rose-Biblio]

どんなバラ?

40弁ほどの大輪、ロゼッタ咲き、ディープ・ピンクまたはパープリッシュなクリムゾンの花色となるケンティフォリア。飾り付けたような萼弁で覆われた蕾も美しさも魅力の一部です。
強い香り。
150㎝高さほどの柔らかな枝ぶりのシュラブ。

育種の経緯

一般的には1837年、J.P. ヴィベールにより育種・公表されたとされていますが、ルイ・パルメンティエは自分が育種したと記録に残しています。彼の作出し、ヴィベールに譲渡したものと思われます。

品種名の由来

アナイス・セガラ(1814-1895)はこの品種が公表された1837年、若干23歳でありながらすでに令名を馳せていた女性詩人です。

Print/ Jules Léopold Boilly [CC BY SA4.0 via Wikimedia Commons]

1814年、パリに生まれたアナイスは幼年期より詩才を発揮し、15歳で王立裁判所の弁護士、ヴィクトール・セガラスと結婚、16歳のときには最初の詩集『レ・アルジェリエンヌ(Les Algeriennes:”アルジェリアの女”』を刊行しました。

彼女の最初の詩集の冒頭の詩の一部です。

奴隷/L'esclave

奴隷!奴隷だ!この私は!...分かりますか?自由な身の人、/Esclave ! esclave! moi !..sais-tu bien, homme libre,
奴隷とは何ですか?あなたは街の中で、/Ce que c'est qu'un esclave? au sein de ta cité,
あなたの耳の中で自然な空気が振動すると、/Et lorsque l'air natal à ton oreille vibre,
すべては自由の香りで…Tout parfumé de liberté…
(『レ・アルジェリエンヌ』、冒頭の詩、Google翻訳;仏語/英語/日本語利用)

女性の権利を主張してフェミニスト運動へ参加、また植民地主義への反対を唱えるなど、熱心なカトリック教徒としての道徳観をバックボーンとした平等主義を貫きました。

1836年、アナイは詩集『レ・オワゾー・ド・パッサージュ(Les Oiseaux de Passage:”渡り鳥”)』を公刊しました。
当時、育種家ジャン・ピエール・ヴィベールは美しいパープル/クリムゾンのケンティフォリアをパルメンティエから譲り受けていたと思われます。ヴィベールはこのケンティフォリアをアナイス・セガラスと命名して市場へ提供しました。(”From the notebook of a rosarian“, 2024.10.24閲覧)