ベル・ド・クレシ(Belle de Crécy)- gallica
どんなバラ?
7cmから9cm径の、開花当初、カップ型、ロゼッタ咲きとなりますが、次第に乱れて丸弁咲きのような花形となります。
開花当初、深いピンクであったの花色は、次第に色を深め、花期の終りにはモーヴ(藤色)へと変化します。
もっとも鮮烈に香るオールドローズのひとつとされ、ガリカ系の香りの典型的なものとされています。(強香)
楕円形の、くすんだ表皮の小葉、細いけれども固めの枝ぶり、褐色の小突起のポツポツと生じている枝ぶり、90cmから120cm高さほどの小ぶりですが強健なブッシュとなります。
美しい花を楽しむためには、いくぶんか注意を払う必要がありますが、良好な成育下で開花した場合は、その深い色合い、鮮烈な香りで比べるものがないほどの美しさです。ガリカの典型的な性質を示すばかりではなく、その頂点に立つ品種だと言えると思います。
育種者、育種年など
『実践農業ジャーナル(Journal de la Société d’Agronomie Pratique)』1829年版にピエール・ジャン・ルイ・ロエザー(Pierre Jean Loui Roëser)により育種されたという記事があります。ロエザーはパリ近郊のクレシ=アン=ブリ(Crécy-en-Brie)で農場を経営していたとのことです。育種したバラの品種名のいくつかは今日まで伝えられ、その代表的な品種がこのベル・ド・クレシです。農場経営者ではありましたが、バラ育種は専業ではなかったようです。
ベル・ド・クレシとは「美しきクレシ」という意味です。フランス王ルイ15世の寵愛を一身に受け、隆盛を誇ったポンパドール夫人が所有していた館のひとつ、クレシ館にちなんで名づけられたというのが長く信じられてきた説がでしたが、現在では育種者ロエザーの農場所在地にちなんで命名されたことが判明しました。
グラハム・S・トーマスの解説が秀逸です。
フランス、レーザー(Roeser)作出、1848年以前。ガリカ・ローズの中で著者が特にお気に入りの品種の一つ。
“Graham Stuart Thomas Rose Book”, 1994
実のところ、私はこのバラを、その柔らかなパルマ・バイオレット色(すべてのオールド・ローズの中で最高のものとして)において、そして香りにおいても、これに勝るものはないほどの最高傑作だと考えている。
入れ替わり説
現在私どもが入手できる’ベル・ド・クレシー(’Belle de Crécy)’は小ぶりなブッシュ樹形となるものですが、つや消し葉、ほとんどトゲがない枝ぶりなど、樹形を除けば典型的なガリカの特徴を示しています。しかし、上記の『実践農業…』の記述では、葉が細く小さい、株肌にフックしたトゲがあるという記述があり、その特徴からか、ベンガル系(チャイナローズ)の交配種だとしています。
このことから、ベンガル(チャイナ)ローズの交配種であるオリジナルは消失してしまい、いずれかの時点でよく似た花色のガリカに入れ替わったのではないかと考える研究家もいます。


